筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状
  1. 上肢麻痺

    多くは指先の麻痺、手の筋萎縮で発症します。進行すると筋のピクつきや関節の痛みもみられます。

  2. 下肢麻痺

    歩行時のつっぱりが初期には多くみられます。進行すると足の麻痺、転倒しやすい、筋萎縮などが加わります。足先の麻痺(足首が上がらない)で発症することもあります。筋のピクつき、筋痛や関節痛もあらわれます。

  3. 球麻痺

    顔・舌・のどの麻痺、筋萎縮があらわれます。 構音障害:しゃべりにくい。 口腔期嚥下障害:かみにくい、かまずに飲み込む、口元からこぼれる、涎がでる、などの症状がみられます。

  4. 咽頭期嚥下障害

    飲み込みにくい、鼻に食べ物が逆流する、喉に残る、つまる、むせる、残留物や痰を喀出しにくい、などの症状がみられます。

  5. 呼吸障害

    初期)大声を出しにくい、長く話せない、動作時の息切れ、ぐっすり眠れない、早朝の頭痛、日中ウトウトする、などの症状が見られます。(進行期)安静時の呼吸困難、肩で息をする、会話も努力を要する、日中の意識障害、などの症状が加わってきます。

筋萎縮側索硬化症(ALS)の場合、片側の手指の細かな運動の障害が初発症状となることが多く、その後、手の筋力低下や筋萎縮が認められるようになります。手の筋萎縮は母指球や小指球にはじまることが多く、上腕筋や肩関節周囲の筋肉の萎縮は遅れて出現します。手の甲の骨間筋の萎縮も初期に生じ、あたかも骸骨の手のような印象をあたえます。

筋萎縮とともに線維束性れん縮が出現するようになります。数週あるいは数カ月後に反対側の上肢(手)にも同様の症状が現れます。その後、筋力低下や筋萎縮は下肢(足)にも広がります。脳神経領域も障害され、言語障害や嚥下困難も出現します。舌の筋萎縮と線維束性れん縮は特徴的です。

さらには呼吸筋も障害され、呼吸困難のため人工呼吸器が必要となります。筋萎縮や線維束性れん縮は、脊髄前角や脳幹の運動ニューロンが障害されたために生じます。筋萎縮側索硬化症(ALS)ではこの他、錐体路と呼ばれる大脳皮質の運動ニューロンから脊髄や脳幹の運動ニューロンに命令を伝達する神経路も障害されます。

このため深部腱反射が亢進し、バビンスキー反射という異常反射が出現します。筋萎縮側索硬化症(ALS)では運動系のみ選択的に障害され、知覚障害はまったく出現しません。これが診断上非常に重要になります。知覚障害を認めれば、筋萎縮側索硬化症(ALS)の診断はつけられません。筋萎縮側索硬化症(ALS)では直腸や膀胱の機能がよく保たれる点も特徴的です。

また眼球運動を支配する外眼筋も障害されにくく褥瘡の発生がまれであるといった特徴もあります。筋萎縮側索硬化症(ALS)の発症には様々な例外があります。下肢から症状がはじまる例や、手より先に体幹に近い筋肉が萎縮することもあります。横隔膜の筋力低下により、早期に呼吸不全を呈する症例も存在します。

また片側の手足のみの障害で片麻痺類似の症状が認められた例も報告されています。なお線維束性れん縮は正常の筋肉にもしばしば認められます。線維束性れん縮のみが筋萎縮側索硬化症(ALS)の初発症状となることは決してありません。